建設業で外国人を雇用する場合の在留資格

 建設業界では人手不足が深刻化し、中長期的な担い手を確保する必要性が認識されていますので、外国人の雇用を検討する場合もあると思います。

 建設業の職務といっても、総務経理等の事務、営業、設計、施工管理、現場監督、技能労働者等多種多様です。

 外国人を雇用する場合に、就業する職務に応じた在留資格(いわゆる「ビザ」)を考えなければなりません。

 在留資格とは、外国人が日本で行うことができる活動(職務内容)を類型化したもので、法務省が外国人に対する上陸審査・許可の際に付与する資格です。

 この類型化された活動(職務内容)に該当することが必要です。

 考えられる在留資格として、①身分系の在留資格、②技術・人文知識・国際業務、③技能実習、④特定技能1号、⑤技能があります。

 以下、順に概略を述べます。

1.永住者、定住者、日本人の配偶者等の身分系の在留資格

 外国人が「永住者」、「特別永住者」、「定住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」の身分系の在留資格をお持ちの場合には就労制限がありません。

 雇用主は外国人を雇用して多様な職務内容に就かせることができます。

 定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等とは以下の方々です。

在留資格
定住者第三国定住難民、日系3世、中国残留邦人、外国人配偶者の連れ子等
日本人の配偶者等日本人の配偶者、実子や特別養子
永住者の配偶者等永住者や特別永住者の配偶者、日本で出生し引き続き在留している実子

2.技術・人文知識・国際業務

 専門的な技術・知識を必要とする業務に従事する外国人、または外国人特有の感性を必要とする専門的能力をもってする業務に従事する外国人を受け入れるための在留資格です。

 一定の学歴又は実務経験、それらと職務内容との関連性が求められます。

 専門的な技術・知識・能力が必要になりますので、いわゆる単純労働や現場労働の職務内容は該当しません。

 該当する職務内容の例として、総務経理等の事務、営業、設計、システムエンジニア、CADオペレーター、技術者、施工管理、海外取引、通訳翻訳などです。

 現場監督は現場の要素が強いので、職務内容全体から該当性が判断されます。

3.技能実習

 技能実習は、技能実習生が日本で培われた技能、技術又は知識の本国への移転を図り、本国の経済発展を担う「人づくり」に寄与する制度です。

 働きながら技能等を習得します。学歴要件は不要ですが、建設関係所定の職種・作業に該当する必要があります。

4.特定技能1号

 特定技能は、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく制度です。

 建設分野も本制度の対象となっています。特定技能1号の通算在留期間は5年間です。所定の職種・作業に該当する必要があります。

 外国人は以下の①又は②の要件も満たす必要があります。

 ①建設分野特定技能1号評価試験に合格し、かつ国際交流基金日本語基礎テスト、もしくは日本語能力試験N4以上に合格すること、

 または

 ②建設業分野の技能実習2号から移行すること

 外国に特有な建築又は土木についての技能を必要とする職務に従事する場合には、技能の在留資格を取得する可能性があります。

 その建築・土木についての一定期間の実務経験が必要です。

 外国に特有な建築・土木についての技能とは、日本にはない建築・土木に関する技能のことで、例えば、バロック方式、中国式や韓国式の建築です。該当例は少ないと思われます。